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【肩峰下インピンジメントの理解に必要な知識】肩周辺の部位5つを詳しく解説

「サイドレイズをしてから肩が痛くなった」

「サイドレイズをすると肩からゴリゴリと音がする」

などといった経験はないでしょうか?

これらの症状の出現は、肩関節内で 肩峰下(けんぽうか)インピンジメント を起こしている可能性が疑われます。

肩峰下インピンジメントという言葉は、ネットで調べればすぐに出て来る言葉なので、日々トレーニングを行っている方なら耳にしたことがあると思います。

しかし、その実態をより良く理解するためには、その現象に肩関節のどの部分が関わっていて、それらの間で何が起こっているのかを知る必要があります。

本記事では、肩峰下インピンジメントを理解するために知っておくべき肩周辺の部位や組織を5つ、部位ごとに詳しく解説していきたいと思います。

この記事を読むと、肩峰下インピンジメントとの関りが深い、肩周辺の組織の名称や特徴、機能的役割に関する知識が得られ、肩峰下インピンジメントの理解を深めることが出来ます。

肩甲骨と烏口肩峰アーチについて

まずは肩関節を構成する骨格について解説していきます。

肩関節を構成する骨の一つには、肩甲骨 というものが挙げられます。

↑↑↑肩甲骨は、胸郭(肋骨+胸椎)と呼ばれる部分の背中側に対になって存在しています。

↑↑↑外側面から見た肩甲骨にはクレーターのように窪んだ部分があり、これを 関節窩 と呼びます。

↑↑↑そのすぐ隣には二つの突起が存在しており、前方にあるものを 烏口突起 、後方にあるものを 肩峰 と呼びます。

↑↑↑そして、これら二つの突起の間には双方の架け橋となる形で靭帯も存在しており、これを 烏口肩峰靭帯 と呼びます。

肩峰・烏口突起・烏口肩峰靭帯 の3つはアーチを形成しており、これを 烏口肩峰アーチ と呼びます。

上腕骨と大結節について

肩関節を構成する骨には、肩甲骨以外にも 上腕骨 というものも挙げられます。

上腕骨は、体でいうところの二の腕の部分の骨にあたります。

上腕骨に見られる球状の部分が 上腕骨頭 と呼ばれており、そのすぐ外側には二つの山のような出っ張りが存在しています。

これら二つの出っ張りには大きいものと小さいものがあり、前者を 大結節 、後者を 小結節 と呼びます。

肩甲上腕関節について

肩甲骨にある関節窩が凹側となり、上腕骨にある上腕骨頭が凸側となって構成された関節を 肩甲上腕関節 と呼びます。

腕を上げる時は、肩甲上腕関節が軸となって上腕骨が上に上がっていきます。

この関節の真上には烏口肩峰アーチがあり、上腕骨から見ると屋根のような形で存在しています。

上腕骨が上に上がっていくと、烏口肩峰アーチと大結節は近づいていきますが、近づいた時の距離が極端に縮むことで、これらの間にある 回旋筋腱板 という筋肉や 肩峰下滑液包 というものが強く挟み込まれる現象を 肩峰下インピンジメント と呼びます。

回旋筋腱板について

肩甲上腕関節を支える4つの組織

肩甲上腕関節は、小さくて浅いクレーター状の関節窩と球状の上腕骨頭が合わさって出来ているという構造上、人体の中でも 非常に広い可動域を有する関節 と言えます。

しかしその反面で、関節の安定性は乏しく、骨のみの力では関節窩の表面に上腕骨頭を保持させておくことは不可能となっています。

安定性に乏しい肩甲上腕関節は、その弱点を補うために骨以外の組織によって支えられています。

その骨以外の組織というのが、関節唇・関節包・靭帯・筋肉 となります。

【関節唇】 関節窩の縁に付着する軟骨。これがあることで、関節窩の面積が広くなって深さも増す。

【関節包】 関節窩と上腕骨頭を直接覆う袋状の構造物

【靭 帯】 関節包の表面に存在する肩甲上腕靭帯

【筋 肉】 関節包や靭帯を覆う形で存在する回旋筋腱板。この筋群が収縮することで、上腕骨頭は関節窩に強く引き付けられる。

これら4つの組織が機能することで、上腕骨頭が関節窩に強く引き付けられた状態を維持することが出来ているのです。

インナーマッスルとアウターマッスル

回旋筋腱板(ここでは「腱板」と呼びます) は関節から近いところに存在していますが、これを更に覆う形で、三角筋などの大きな筋肉が体の表面に存在しています。

サイドレイズでは、この三角筋が大きな力を発揮することで、負荷に抗した腕の運動が可能となっています。

そして、三角筋が鍛えられて肥大することで、肩のアウトラインが形成されます。

このように、関節運動において大きな力を発揮し、体のアウトラインを形成するような筋肉を アウターマッスル と呼びます。

腕を上げる時には、アウターマッスルである三角筋が収縮することで、上腕骨が上に持ち上がり運動が遂行されます。

そして、それと同時に腱板が収縮することで、関節窩に上腕骨頭がしっかりと引き付けられて、運動の軸となる肩甲上腕関節が安定します。

この腱板のように、アウターマッスルより内側に存在し、関節の安定化に機能する筋肉のことを インナーマッスル と呼びます。

関節を動かす時に腱板が十分に収縮しなければ、上腕骨頭は様々な方向に動揺してしまい、肩峰下に衝突してしまうこともあります。

そのため、安全でスムーズな関節運動を行うためには、インナーマッスルによる関節の安定化は非常に重要なものとなるのです。

4つの筋肉に分けられる回旋筋腱板

腱板とは 4つの筋肉 の総称であり、各々が肩甲骨から上腕骨にかけて走行したものとなっています。

そして、その4つの筋肉に挙げられるのが、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋 となります。

↑↑↑右腕の腱板を前方と外側から見た図となります。

前方から見た図では、サイズの大きい肩甲下筋が目立って見られます。

また、肩甲骨の上側には棘上筋、下側には小円筋も見ることが出来ます。

↑↑↑右腕の腱板を後方と外側から見ると、図のようになります。

後方から見た図では、棘上筋・棘下筋・小円筋が並んでいるのが見られます。

↑↑↑腱板の付着部(上腕骨頭側)を拡大した図になります。

上腕骨頭の上方には棘上筋、前方には肩甲下筋、後方には棘下筋と小円筋があり、各筋肉が上腕骨頭を囲むようにして付着しているのが確認出来ます。

各筋肉が図のような形で付着し作用することで、上腕骨頭がどの方向に回転しても関節窩に引き付ける力を保ち、関節の安定化を図ることが出来るようになっています。

肩峰下滑液包とは?

滑液包について

滑液包とは、水風船のように中身が滑液という液体で満たされた袋状の構造物のことを指します。

これは筋肉・靭帯・骨などが互いに隣接し、摩擦が生じやすい部分に存在することで、その間の滑りを良くしたり、強い摩擦や衝突によるショックを和らげるクッションのような役割を果たしています。

肩の周辺だけでも、筋肉・靭帯・骨などが互いに隣接する部分は複数あるため、滑液包も様々に存在しています。

肩峰下滑液包について

右腕の肩甲上腕関節とそれを取り巻く腱板の図となります。

烏口肩峰アーチの真下には腱板があり、この間に介在する滑液包が 肩峰下滑液包 になります。

右側の肩甲骨にある肩峰と腱板(棘上筋)、そしてその間にある肩峰下滑液包の図となります。

肩峰下滑液包は、腱板の付着部である大結節付近に存在しており、大きくて平らな形をしているのが特徴です。

肩峰下滑液包の役割について

肩峰下滑液包は、肩峰の真下を大結節や腱板がスムーズに通過出来るように滑りをよくする役割と、肩峰と大結節が接近した時の衝撃を和らげる役割を果たしています。

上の図は、肩峰の真下を大結節が通過する時に、肩峰下滑液包がどのように動くのかを示したものとなります。

この図では、大結節の移動が進むにつれて、肩峰下滑液包が折れ曲がるように変形している様子が見られます。

このように、肩峰下滑液包が柔軟に形態を変えることで、大結節や腱板の滑りを良くし、スムーズな移動を補償していることが分かります。

炎症を起こす回旋筋腱板と肩峰下滑液包

肩峰下インピンジメントとは、烏口肩峰アーチと大結節の間で、腱板と肩峰下滑液包が挟み込まれる現象を指します。

元々、肩峰下滑液包はその特性上、常に圧迫を受けている組織ではありますが、その圧迫によるストレスが非常に強い場合、ダメージを負い炎症を起こすようになります。

また、それほど強い圧力を受ければ、滑液包の下にある腱板も同様にダメージを負って 炎症を起こしてしまう のです。

この二つの組織が炎症を起こせば、腫れ上がって痛みを発するようになります。

こうなると、関節を動かした時に肩峰下で少しの摩擦や圧迫が起こっただけでも、滑液包や腱板は敏感に反応して痛みを発するようになります。

これが、肩を動かした時に生じる痛み(運動時痛)となるのです。

まとめ

今回は、肩峰下インピンジメントの理解に必要な肩関節周辺の部位について解説していきました。

要点をまとめると以下の通りになります。

少しでもインピンジメントが気になった方にとって、本記事が参考になれば幸いです。